尖がりエンタメ批評〘ゲーム/アニメ/シネマ〙

好奇心で紡ぐエンタメ体験記

『ゴールデンカムイ』 ——埋蔵金争奪サバイバル・バトル

原作への敬意が随所に感じられる作品


🎬 映画『ゴールデンカムイ』基本情報

■ 公開日

  • 2024年1月19日(金)公開

■ 原作

  • 野田サトル『ゴールデンカムイ』(集英社ヤングジャンプ コミックス)

■ 監督

  • 久保茂昭

■ 脚本

  • 黒岩勉

■ 主演・キャスト(一部)

  • 杉元佐一:山﨑賢人
  • アシㇼパ:山田杏奈
  • 尾形百之助:眞栄田郷敦
  • 白石由竹:矢本悠馬
  • 鶴見篤四郎:玉木宏
  • 土方歳三:舘ひろし

■ 上映時間

  • 128分

■ 配給

  • 東宝

■ 興行収入

  • 29.6億円

🎬 辛口短評

明治末期の北海道。日露戦争帰りの「不死身の杉元」こと杉元佐一は、アイヌ民族から奪われた金塊の存在を知り、アイヌの少女アシㇼパと共にその行方を追う。金塊の手がかりは、24人の脱獄囚の刺青に刻まれた暗号。さらに第七師団の鶴見中尉、そして土方歳三らも金塊を狙い、三つ巴の争奪戦が始まる。

映画は、杉元佐一(山﨑賢人)が“不死身”と呼ばれる所以となった203高地の激戦から始まる。
ここでの演出は、原作の「戦争帰りの男」という設定を視覚的に補強するため、泥・血・煙の密度を極端に高めたカメラワークが採用されている。ただし、VFXの質は高いものの、戦場のスケール感はハリウッド級とは言い難く、“日本映画としては頑張っている”という評価に落ち着く気がする。

杉元がヒグマに襲われ、アシㇼパ(山田杏奈)に助けられるシーンは、原作の象徴的な出会いをほぼ忠実に再現している。杉元が倒れ、ヒグマが迫る。そこにアシㇼパが矢を放ち、ヒグマをしとめる。それをきっかけに、互いに警戒しながらも、金塊の話題で協力関係が生まれるという展開。
ここで注目すべきは、アシㇼパの“静かな強さ”をどう表現するかという難題に対し、
山田杏奈が「目線」と「間」で演じ切っている点が特筆に値する。特に、杉元の“嘘”を見抜く場面では、一瞬だけ目を細める演技が、アシㇼパの洞察力と警戒心を自然に伝えている。

映画は2時間強の尺に膨大な原作を収めるため、刺青囚人の紹介と鶴見中尉の登場がかなり圧縮されている。
鶴見中尉(玉木宏)は、初登場から“異様な存在感”を出すため、顔の傷を強調するライティングが多用される。しかし、原作の“狂気と知性のバランス”までは描き切れていない印象。玉木宏の演技は魅力的だが、「鶴見中尉の本質に触れる前に物語が進んでしまう」という構造的な弱点があると思った。

白石由竹(矢本悠馬)が登場するシーンは、映画版の中でも特にテンポが良く、原作の“コメディとスリルのブレンド”を最も上手く再現している。特に白石が牢屋の隙間をすり抜けるシーンや、看守を翻弄しながら逃げるシーンなどで、追い詰められた瞬間に“奇妙な身体能力”を発揮する。矢本悠馬の身体表現が非常に優れており、「白石は実写化で最も成功したキャラ」と評される理由がよく分かる。

まとめると、原作愛に満ちた誠実な実写化だが、原作の濃密さを2時間に収めるには限界があったと評価している。
それでも、“続編を観たい”と思わせるだけの熱量と完成度は確かにあるといえる。

★★☆☆☆