ハル・ベリーの“母の執念”を描くワンシチュエーション型サスペンス
🎬 『チェイサー』基本情報
■ 作品データ
- 邦題:チェイサー
- 原題:Kidnap
- 公開年:2017年(アメリカ)
- 日本公開:2017年9月23日
- 上映時間:95分
- 製作国:アメリカ
- ジャンル:サスペンス/スリラー/アクション
■ スタッフ
- 監督:ルイス・プリエト(Luis Prieto)
- 脚本:クネイト・リー(Knate Lee)
- 製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ ほか
- 音楽:フェデリコ・フシド
■ キャスト
- ハル・ベリー … カーラ(主人公の母)
- セイジ・コレア … 息子フランキー
- クリス・マクギン
- リュー・テンプル

🎬 辛口短評
シングルマザーのカーラは、遊園地で息子フランキーが誘拐される瞬間を目撃する。
警察の対応を待つ時間すら惜しいと判断した彼女は、自ら誘拐犯の車を追跡し、極限状態の中で息子を取り戻すための決死のチェイスに挑む。
冒頭、息子フランキーの成長をホームビデオ風に見せる導入があり、その後のカーラの仕事シーンで、シングルマザーとしての生活感・疲労感・それでも息子を大事にしている様子が描かれる。
ここまでは、「この母親が息子を失うことは、人生の全否定に等しい」という前提をきちんと積んでいて、誘拐が起きたときの感情的インパクトに向けて準備できている。
ふと目を離した隙に、ベンチにいたはずの息子がいなくなっている。周囲を探し回る主観的な目線のカメラワーク。駐車場で、車の中に押し込まれている息子を“かろうじて”視認する。
この一連の誘拐の瞬間の演出は、「親の悪夢」そのものとしてかなりよくできている。ここまでは、サスペンスとしての設計も感情の乗せ方も、かなり優秀な部類だと思う。
誘拐犯の車を見つけた瞬間、カーラは「警察を待つ」という選択肢を捨てて即座に追う決断をする。
自動車で追うカーラの運転は、上手いというより「必死すぎて危険」なレベルで、それがそのまま彼女の精神状態を表している。
一方で、このパートからドラマ世界のリアリティが急速に薄くなる。これだけの大事故・危険運転が連続しているのに、警察の介入が極端に遅く機能していないし、周囲の車や人々の反応も、映画的に都合のいいタイミングでしか存在しない。つまり、「母親の執念」を強調するために、彼女を取り巻く世界全体の知能と反応速度を下げてしまっているように見える瞬間が多い。
サスペンスとしては、「主人公以外がバカになる」構造は緊張感を削ぐので、ここはかなり評価が下がるポイントだと思う。
クライマックスでは、カーラが単身で敵の拠点に乗り込み、息子を救出しようとする。しかし、敵側のキャラクター造形が薄く、「こいつらにここまでの怒りをぶつける必然性」がドラマとして積み上がっていない。そのため、カーラの暴力が「母の怒りの爆発」というより、「B級アクション的なお仕置き」に見えやすくなってしまっている。
なので、「リアルな誘拐サスペンス」ではなく、「母親版『96時間』的な、感情直結型B級チェイス映画」として見ると、かなり割り切れる作品だと思う。
母子はいったいどんな結末を迎えるのか?
★☆☆☆☆